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報酬の源泉徴収と請求書:10.21%の計算、書き方、振込額、確定申告の精算まで

デザイン料・原稿料・講演料などの報酬は、支払う側が所得税を天引きして国に納める「源泉徴収」の対象になることがあります。税率は10.21%(100万円超の部分は20.42%)で、請求書で消費税を区分しておけば、税抜の金額に対して計算できます。この記事では、対象かどうかの判断、計算例、請求書への書き方、振込額、確定申告での精算までを順に確認します。

公開:2026-10-07|最終確認:2026-10-07|約6400字

報酬から源泉徴収されるのは、どんな場合か?

フリーランスが企業から報酬を受け取るとき、請求額より少ない金額が振り込まれることがあります。差額は「源泉所得税」で、支払った企業が本人に代わって国に納めた税金です。国税庁の案内では、居住者への支払いのうち、原稿料や講演料など所得税法で定められた報酬・料金は、支払時に所得税と復興特別所得税を源泉徴収して納付する仕組みになっています。

ここで押さえるポイントは3つです。

  • 対象になるのは「報酬の種類」で決まる(職業名ではなく、何の対価か)
  • 源泉徴収をするのは「支払う側」。請求書を出すフリーランスが自分で計算して納めるわけではない
  • 引かれた税額は税金の前払いで、確定申告で精算できる

請求書を作る側でも、源泉徴収の有無で振込額が大きく変わるため、請求書の段階で金額を正しく書いておく必要があります。

源泉徴収の対象になる報酬と、ならない報酬

国税庁は、居住者に支払う次のような報酬・料金を源泉徴収の対象として案内しています。

  • 原稿料、挿絵、作曲、デザイン料、写真、翻訳、通訳、校正などの報酬(所得税法第204条第1項第1号)
  • 講演料
  • 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などへの報酬
  • モデル、芸能人の出演料、プロスポーツ選手の報酬
  • ホステス、コンパニオンなどの報酬
  • 契約金、広告宣伝のための賞金(1回の支払が5万円以下の賞金は除く)

デザイン料の範囲について、国税庁の通達は、工業デザイン、グラフィックデザイン(広告、ポスターなど)、パッケージデザイン、インテリアデザイン、ディスプレイなどを例示しています。また、デザインと施工を一括して請け負う場合は、デザイン部分と施工部分に区分して、デザイン部分だけが対象になるという考え方が示されています(ただしデザイン部分が極めて少額な場合は不要とされています)。

名目が違っても、実態で判断される

国税庁は、「謝金」「取材費」「調査費」「車代」などの名目で支払っても、実態が原稿料や講演料と同じなら、すべて源泉徴収の対象になると説明しています。請求書に「制作協力費」と書いたから対象外、とはなりません。

対象外になりやすいもの

  • 支払者が、ホテルや交通機関に直接支払う交通費・宿泊費(通常必要な範囲)
  • 試験問題の出題料や答案の採点料
  • 法人への支払い(国税庁の案内では、内国法人への支払いで対象になるのは主に競馬の賞金など限られる)
  • 報酬の種類が上のリストに当たらない業務(例:一般的な物販、単純な作業の請負など)

Webサイト制作、プログラミング、動画編集、ロゴ制作などは、国税庁の例示に「デザイン料」はあっても、これらの名称そのものは挙がっていません。同じ「制作」でも、実態によって扱いが分かれることがあるため、支払う側と事前に確認してください。判断がつかないときは、税務署か税理士への相談が確実です。ココナラなどで受ける案件も、同じ考え方で判断されます。

源泉徴収の税率は?10.21%と20.42%の使い分け

原稿料、デザイン料、講演料などの報酬の税率は次のとおりです(復興特別所得税を含む)。国税庁の案内で確認できる計算式です。

1回の支払金額(源泉徴収の計算対象額)計算式
100万円以下支払金額 × 10.21%
100万円超(支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円

102,100円は、100万円×10.21%の金額です。100万円までは10.21%、超えた部分だけ20.42%がかかります。100万円を超えたからといって、全体が20.42%になるわけではありません。

10.21%の内訳は、所得税10%と復興特別所得税0.21%(所得税額の2.1%)です。ここでいう「1回の支払」の単位や、分割して支払った場合の判定は、実際の契約によって変わることがあるため、気になる場合は国税庁の案内で確認してください。1円未満の端数は切り捨てるのが一般的な扱いです。

消費税を区分して書けば、税抜の金額で源泉徴収できる

報酬に消費税がかかる場合、源泉徴収の対象額はどうなるのでしょうか。国税庁の案内では、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額としてさしつかえないとされています。逆に、区分されていなければ消費税を含めた金額が対象になります。

つまり、請求書で「税抜金額」と「消費税額」を分けて書くと、源泉徴収の計算対象額が小さくなり、天引きされる金額も小さくなります。税込金額だけが書かれた請求書は、全額が対象になりやすい点に注意してください。

この「区分」は、適格請求書の記載事項(税率ごとの対価の額と消費税額等)をきちんと書いていれば、自然に満たされます。インボイスに対応した請求書を書くこと自体が、源泉徴収の面でも有利になります(書き方は適格請求書の書き方の記事を参照)。

計算例:税抜10万円、税込10万円、100万円超の案件

実際の金額で比べてみます。消費税は10%、源泉徴収は1円未満を切り捨て、とします。すべてnodeで検算した数値です。

ケース1:税抜10万円+消費税1万円(区分記載あり)

  • 源泉徴収の対象額:100,000円(税抜)
  • 源泉徴収税額:100,000円 × 10.21% = 10,210円
  • 請求合計:110,000円
  • 振込額:110,000円 − 10,210円 = 99,790円

ケース2:税込10万円(税抜90,909円+消費税9,091円)で、区分記載あり

  • 源泉徴収の対象額:90,909円
  • 源泉徴収税額:90,909円 × 10.21% = 9,281円
  • 振込額:100,000円 − 9,281円 = 90,719円

同じ税込10万円でも、消費税を区分せず「報酬100,000円」とだけ書いた場合は、対象額が100,000円になり、源泉徴収税額は10,210円、振込額は89,790円です。区分するだけで、手取りが929円増える計算です。

ケース3:税抜150万円+消費税15万円(100万円超)

  • 源泉徴収の対象額:1,500,000円
  • 源泉徴収税額:(1,500,000円 − 1,000,000円)× 20.42% + 102,100円 = 102,100円 + 102,100円 = 204,200円
  • 請求合計:1,650,000円
  • 振込額:1,650,000円 − 204,200円 = 1,445,800円

区分記載がない場合(税込165万円を全額対象とする)は、源泉徴収税額が234,830円、振込額が1,415,170円になります。

3つのケースを比べると、手取りに効くのは「報酬の金額」だけでなく「請求書の書き方」であることが分かります。計算が面倒なときは、ツールで金額を入れるだけで確認できます。

請求額・源泉徴収・振込額ツール:税抜から振込額まで一度に計算

請求書には源泉徴収をどう書くか?

請求書には、次の順で書くと、支払う側も計算を確認しやすくなります。

項目金額
小計(税抜)100,000円
消費税(10%)10,000円
請求金額(税込)110,000円
源泉所得税(10.21%)△10,210円
差引お振込金額99,790円

書き方のポイントは次の4つです。

  1. 消費税は「税抜の小計」の下に、税率ごとに別の行で書く(適格請求書の記載事項にもなる)。
  2. 源泉所得税は、請求金額(税込)の下に「差し引く金額」として書く。消費税額の欄に混ぜない。
  3. 源泉徴収の対象額が分かるように、「源泉徴収対象額:100,000円」と補足する。
  4. 最終行に、実際に受け取る「差引お振込金額」を書く。

請求書の段階で、源泉徴収する前提の金額を書くかどうかは、取引先によって違います。「請求は税込総額で出してほしい。源泉は当社で計算する」と指定する会社もあります。契約や発注の時点で、請求額と振込額の考え方をすり合わせておくと、後の行き違いが減ります。

振込手数料を引かれる場合

取引先が振込手数料を差し引いて振り込む場合もあります。たとえば手数料が330円なら、ケース1の振込額は99,790円 − 330円 = 99,460円です。手数料の負担は、事前に合意していたかどうかが大切です(詳しくは請求書の運用ルールの記事で扱います)。

請求書作成ツール:源泉徴収と振込額を入れた請求書を作る

源泉徴収をするのは誰?支払う側の条件

「個人から仕事を頼まれた場合も、源泉徴収されるのか」という質問は多いです。国税庁の案内では、源泉徴収義務者になるのは、会社だけでなく、給与などの支払をする個人事業主、学校、官公庁、人格のない社団・財団なども含まれます。一方で、次の例外があります。

  • 常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その支払について源泉徴収義務がない
  • 給与について源泉徴収義務を負う個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金は、源泉徴収する必要がない(例:会社員が個人的に税理士へ報酬を支払う場合)

整理すると、次のようになります。

支払う側源泉徴収
法人(会社)報酬の種類が対象なら義務あり
従業員に給与を払っている個人事業主報酬の種類が対象なら義務あり
給与を支払っていない個人(個人のお客さん、フリーランス同士など)義務なし

つまり、個人のお客さんからの依頼や、従業員のいないフリーランス同士の取引では、源泉徴収されないのが原則です。ただし、個人事業主がアルバイトなどに給与を払っていれば、その事業主は源泉徴収義務者です。支払う側がどちらに当たるかは、相手が知っています。迷ったら「御社は源泉徴収の対象ですか」と、請求書を出す前に聞いてしまうのが早いです。

また、受け取る側が法人の場合は、原則として対象外です。個人事業主として受ける案件と、法人として受ける案件で、請求書の金額が変わる点も押さえておいてください。

ココナラなどのプラットフォーム経由では、源泉徴収はどうなる?

ココナラのような仲介サービスでは、取引の相手が個人であることが多く、源泉徴収が発生しないケースがあります。ココナラの公式ヘルプでは、次のように案内されています(確認日:2026年10月7日)。

  • ココナラは取引の当事者ではないため、源泉徴収は行わない
  • 2020年1月に、法人アカウントの購入者向けに「源泉徴収機能」が追加された。購入者が見積り相談や公開依頼で発注するときに「源泉徴収をして支払う」を選ぶと、決済画面に源泉徴収税額が表示される
  • 対象となるのは、購入者が審査を通った法人アカウントで、出品者が個人または個人事業主として登録しており、源泉徴収対象のカテゴリーの取引で、見積り相談または公開依頼を経由した場合
  • 源泉徴収税を国に納付するのは、法人の購入者
  • 出品者の売上は従来と変わらず、源泉徴収税は別に計算される。出品者は購入者から支払調書などの情報提供を求められた場合に対応が必要

つまり、個人の購入者との取引や、通常のサービス購入では、源泉徴収されないことが多いと考えられます。反対に、法人から見積りや公開依頼で受ける案件では、源泉徴収の対象になる可能性があります。仕様や対象カテゴリーは変更されることがあるため、実際の案件ではヘルプの最新内容を確認してください。クラウドワークスやランサーズなど、他のサービスでの扱いは、この記事では確認できていません。各サービスの公式ヘルプで確認してください。

支払調書と納付:支払う側がすること、受け取る側が知っておくこと

源泉徴収をした側には、納付と調書の提出の義務があります。

納付期限

国税庁の案内では、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として、実際に支払った月の翌月10日までに納付します。たとえば11月に報酬を支払った場合は、12月10日までです。給与の支払人数が常時10人未満の場合の「納期の特例」(7月10日・1月20日)がありますが、対象は給与や退職手当、特定の士業報酬などに限られるため、原稿料やデザイン料にも使えるかは、国税庁の案内で確認が必要です。

支払調書

「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、同じ人に対する年間の支払金額が5万円を超える場合に、支払う側が税務署に提出します(原稿料、デザイン料、講演料などの区分)。提出期限は、翌年1月31日です。支払調書は、受け取る側の確定申告の収入金額と照らし合わせて確認される書類なので、自分の売上を月ごとに記録しておくことが、申告のミス防止につながります。

支払調書は支払う側が作って税務署に出す書類で、受け取る側が作成する書類ではありません。そのため、取引先から氏名、住所、マイナンバーなどの提出を求められる場合があります。提出先や利用目的、管理方法を確認した上で応じてください。

引かれた源泉徴収は、確定申告でどう精算する?

源泉徴収された所得税は、あなたの納めるべき所得税の「前払い」の扱いです。確定申告では、1年間の収入から経費や控除を引いて税額を計算し、すでに源泉徴収された税額を差し引いて精算します。

精算のイメージ(金額は仮の例)

  • 年間の源泉徴収税額の合計:306,300円
  • 申告で計算した年間の所得税等:250,000円
  • 差引:250,000円 − 306,300円 = △56,300円 → 56,300円が還付される

源泉徴収が多いフリーランスは、経費が多い、控除が大きい、といった理由で還付になることがよくあります。逆に、源泉徴収が少なければ、差額を納めます。いずれにしても、売上(収入)は「源泉徴収される前の金額」で帳簿につけるのが基本です。振込額をそのまま売上にしてしまうと、収入が少なく見え、源泉徴収の分を経費にも載せ忘れてしまいます。

  • 売上:請求金額(消費税の扱いは選択した経理方式による)
  • 源泉所得税:売上から差し引かれた金額。申告書の「源泉徴収税額」欄に集計して書く
  • 入金:売上 − 源泉所得税の金額

確定申告が必要かどうか、いつ何をするのかは、診断ツールで確認できます。手取りの全体像を見たいときは、税金・手取り概算ツールが使えます。

確定申告・開業届 診断:自分に申告が必要かを確認 税金・手取り概算ツール:源泉徴収後の手取りを見積もる

よくある疑問とつまずきポイント

税込でしか請求書を出せない取引先の場合は?

取引先のシステムの都合で税込金額のみの請求になる場合もあります。その場合でも、請求書の中で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、税抜の金額を対象にしてもらえます。取引先に、区分した請求書でも処理できるかを聞いてみてください。

源泉徴収が正しいか、どうやって確認する?

支払明細書や振込通知に、対象額と税額が書かれているかを見ます。自分で計算した金額と合わなければ、この記事の計算式に当てはめて、差額の理由を取引先に聞きます。多くは「消費税を含めて計算していた」「端数処理が違った」のどちらかです。

源泉徴収されなかったのに、本来は対象だったら?

支払う側が徴収し忘れても、受け取る側の所得税が減るわけではありません。確定申告では、きちんと収入を申告します。支払う側が後から納付することもあります。トラブルになる場合は、税務署か税理士に相談してください。

この記事の限界

  • 対象かどうかは、報酬の実態で判断されます。個別の案件で境界線にあたる場合は、税務署や税理士への確認が確実です。
  • 端数処理(1円未満の切り捨て)や、1回の支払の単位、分割払いの扱い、納期の特例の対象範囲は、国税庁の案内で最新の内容を確認してください。
  • ココナラ以外のプラットフォームでの扱いは確認できていません。
  • 復興特別所得税の課税期間は、法令で定められた期間があります。制度が改正される場合があるため、最新の税率は国税庁で確認してください。
  • 支払調書の提出基準は、報酬の種類によって異なります。この記事では原稿料やデザイン料などを想定しています。

本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務・法律相談ではありません。制度は改正されることがあるため、実際の判断は国税庁などの公式情報や、税理士などの専門家にご確認ください。